低体温症への処置
今回は低体温症に対する処置を紹介したいと思う。
低体温症(ハイポサミア)とは、環境温度が体温よりも低いところで活動したり、何らかの要因で体調を崩したりして外気温に順応できず、奪われる熱量が体内で作られる熱量を上回った場合に起きる症状をいう。
(藤原尚雄+羽根田治 著『レスキュー・ハンドブック』山と渓谷社 より)
レスキュー・ハンドブック | |
藤原 尚雄 羽根田 治 山と溪谷社 2002-04-01 by G-Tools |
この症状が出始めたとき、体の外側だけでなく内側の温度も低くなっている。
症状には①軽度②中度③重度の3つに分けられており、重度の致死率はかなり高い。
軽度の症状としては、唇が青くなる、体の震え、頻尿、思考錯乱、ろれつが回らなくなる、元気がなくなるなどがある。
この症状が出たときに休憩をとり、暖をとり、食料や水分をとればそれ以上の悪化を防ぐことができる。
逆に、活動を続ければ、症状は急速に中度・重度へ進行し、取り返しの付かないことになる。
簡単に防ぐことができるものであるため、予防に気をつけたい。
対処方法
いずれのレベルの低体温症でも、我々にできることは限られている。
基本的には、「保温」と「安静」である。
具体的には、濡れている着衣を脱がし、新たな衣服、毛布、レスキューシートなどで覆ってやることでそれ以上の体温の発散を防ぐ。さらに、カロリーが高く吸収率のいい、チョコレートやホットミルクなどの温かい飲み物を与え、熱代謝を促す。
本人が望んでも、喫煙や飲酒をさせてはいけない。
一時は体があったまるような感覚になるが、その後さらなる体温の定価をもたらすからだ。
症状のレベルが中度・重度の場合には上の処置だけでは回復しない。
上の処置を行った上で速やかに医療施設に運ぶことが重要である。
なお、ベア・グリルスがよくやっていたのが腕立て伏せである。
冷たい水に使ったらとにかく腕立て伏せ。
SAS時代、寒いと言ったら上官に腕立て伏せ200回を命じられたそうだ。
しかし、この行動は一般人にはオススメできない。
低体温症の場合、運動をすることにより手足の末端の特に冷えている血液が心臓へと流入し、心臓発作を起こす恐れがあるからだ。
同様に、手足のマッサージもやめた方がいい。
腕立て伏せはベアだからこそできる芸当である。
真似しないように気をつけたい。